通信受講
通信受講
「県で1番だったんですよ」
安光さんのお宅にお邪魔して、話を伺い始めた途端に、意味不明の言葉に見舞われる。
県で、1番?
クラスでも、学年でもなく、山口県で1番?
「高校の入試で、県全体で1位だったということですか? 学校で1番ではなく?」
はい、と穏やかな表情で安光さんは言う。
「ほとんど全教科満点で、最後に2点だけ引かれましたが、県で1番だったということです」
一緒に行った鳥井と顔を見合わせる。
正直、困った。
安光さんが生まれながらの天才で、DNA的な要因によって、成果を上げられたとなれば、わざわざ山口県に話を伺いに来た意味がなくなると思ったからだ。
安光さんの成果とは、言わずと知れた日本の最高学府である東大に現役で合格し、かつ、東大を卒業した後に、日本の藝術系大学の頂点に君臨する東京藝術大学に一発で合格するという離れ技を成し遂げていることだ。
僕は、高校生の頃に漫画の『東京大学物語』に夢中になっていて、最近では東京藝大を目指す若者達を描いた『ブルー・ピリオド』をいたく気に入り、秘本にまでしていたのだ。
その漫画の主人公がそれぞれ目指すレベルの目標を、一人でWで達成しているという愕然とするような偉業を成し遂げた人が目の前にいた。
もし、それが遺伝的天才性ゆえとすれば、再現性はほぼない。我々が学ぶべき要素はないということになる。
ただし、僕は有り体に言えば、長く多くの講座をお客様として受講していただいている安光さんに一度も“天才性”を感じたことがなかった。安光さんの特異性は遺伝子的な天才性に現れるのではないと考えていた。
念のために、聞いてみる。
「ご両親は、やはり、高学歴だったのですか?」
「いいえ、高卒でした、二人とも」
ちょっと、ほっとする。
ご両親ともに、たとえば、東大生だったりすれば、遺伝的優位性が否定できなくなる。
安光さんの強さは、遺伝的天才生ではなく、“続ける力“にあると僕は見ていた。
先日も、天狼院内で驚くべき大記録を樹立したからだ。
天狼院のメディア「Web READING LIFE」での連載企画で、連載が実に200回を突破したのだ。
毎週、数年に渡り、投稿し続けたことになる。
体調が悪かったときも、心の調子が悪かったときも、だ。
普通、気づけば、やろうと思っていたことを辞めてしまう。
英語の勉強も、ダイエットも、読書も、日記もだ。
けれども、一方で、安光さんのように、気がつけば、淡々と静かに成果を積み上げている人がいる。
この違いは、いったい、なんなのか?
正直いえば、僕と安光さんは、正反対の性質を持っているように思えてならない。
元来、僕は何事も長く続かなかった。すぐに別の興味を持ち、飽きて中途半端にやめてしまう。
ところが、大人になってから、淡々と続けることの重要性に気づいてから、人生が好転し始めた。
続けることが、成果につながった。
続けることができるようになれば、誰でも、才能を超えた大きな成果を得られるのではないかーーそれによって、人生が大きく変わるのではないかと思う。
その秘密を握っているのが、安光さんだとかなり前から考えていた。
そして、今回、安光さんの快諾も得て、遂にイベント化することができることになった。
今日、予備の取材で安光さんに2時間にも渡り様々深掘りして聞いたが、話を聞くにつれ、安光さんの成果の正体が見えてきた。
それは、実にシンプルなシステムだった。
言い換えれば、僕らにでもインストール可能な要素が数多くあった。
キーワードは、
・毎日欠かさない「マイクロ努力」
・コミュニティや組織がもつ「やる空気システム」
だ。
平たくいうと、ルーチンと環境が、成果を上げるということだ。
それについて、本講座では、詳しく聞いて、解き明かしていこうと思う。
安光さんは、こう言った。
「東大なら、入れます」
話を聞いてみると、本当に入れるのではないかと思った。
そして、今、大人になった僕らにとっての“東大”はなんだろうと様々置き換えて考えてみた。
あった。
無数にあった。
今からでも、安光さんがいう「東大」と同じような概念を、達成できるのではないかとワクワクしてきた。
みなさま、本講座をご期待ください。
どうぞよろしくお願いします。
天狼院書店
店主三浦
安光 伸江(NOBUE YASUMITU)
山口県内 1位の成績で下関西高等学校に合格。その後、全国大会にも出場する吹奏楽部に所属しつつ、塾も家庭教師も使わずに地方で、東大現役合格。東大卒業後、日本の芸術系最高峰の東京藝術大学 音楽学部に入学。東京藝術大学大学院へ進む。5歳から高校三年生まで続けていた念願のピアノの道に進む。現在は、郷里の山口県下関市に戻り、「やすみつ音楽教室」を営む。天狼院書店ではREADING LIFE編集部公認ライターとして「素人投資家いちねんせい」を休みなく連載し、先日、連載回数250回を突破。